理事長コラム「ススメのひらき」~若いからといって・・・

デジタル技術は私たちの生活に欠かせないものとなり、ChatGPTのような生成AIも急速に普及しています。しかし、誰もがデジタル技術を自由に使いこなせるわけではありません。

これまで「デジタルディバイド(情報格差)」はシニア層の問題として認識されてきましたが、近年では若者の間にも広がりつつあります。スマートフォンを所有していても、環境やスキルの不足により、その恩恵を十分に受けられていない若者がいます。

今回のコラムは、若者におけるデジタルディバイドの現状と、その解消に向けた課題について考えてみましょう。

若者が直面するデジタル格差の実態

デジタルディバイドとは、デジタル技術を利用できる人とできない人の間に生じる格差のことです。特に若者におけるデジタルディバイドは見過ごされがちです。「若者はデジタルネイティブだから問題ない」という思い込みは危険です。すべての若者が平等にデジタル技術を利用できるわけではありません。

スマートフォンを持っていても、使い方やアクセス環境に大きな差があります。経済的に困窮している家庭では、固定回線のインターネット接続がない、あるいは利用料を支払いが困難な場合があります。パソコンを所有していない家庭では、学習や情報収集の機会が制限されます。

世帯年収別インターネット利用率
出典:総務省「令和5年版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r05.html

技術を使いこなせる若者とそうでない若者の差

スマートフォンを持っているだけでは、デジタル技術を活用できているとは言えません。デジタル技術を使いこなす能力には個人差があり、SNSやゲームといった娯楽目的での利用に留まっている若者もいます。ビジネスや学習に必要なスキル(文書作成、データ分析、プログラミングなど)を身につけている若者はまだ少数派です。

こうしたスキル格差は、将来の就職やキャリアに大きく影響します。デジタル技術を使いこなす能力が不足していると、希望する仕事に就くのが難しくなる可能性があります。技術を単に「使う」だけでなく、「活用する」方法を学ぶことが重要です。

デジタルディバイド解消への取り組み

デジタルディバイドの解消は、社会全体で取り組むべき課題です。特に若者の未来にとって、デジタル技術へのアクセスと活用能力の向上が不可欠です。

  • 家庭におけるサポート体制の強化:保護者がデジタル技術に不慣れな場合、子どもへの適切な指導が難しくなります。家庭向けの啓発活動やサポート体制の構築も重要です。
  • 学校教育におけるデジタルリテラシー教育の充実: デジタル技術の活用方法に加え、情報を読み解き、適切に発信する力の育成が必要です。
  • 地域におけるデジタル教育支援:デジタルスキルを持つ高齢者や大学生などが若者にスキルを教える場を設けることで、デジタルスキル学習講座の開催などが有効です。

デジタルディバイドの解消は、若者が未来への可能性を広げるための基盤づくりです。すべての人が平等にデジタル技術の恩恵を受けられる社会を目指し、家庭、学校、地域社会が連携して取り組むことが重要です。

おまけ

今回のコラムのテーマ「若者のデジタルディバイド」は、中学生Uさんからの問い合わせがきっかけでした。ある日、「若者のデジタルディバイドについてインタビューさせてほしい」というメールが届いたのです。以前から漠然と意識はしていましたが、このインタビューを機に改めて調べてみました。コラムで書いたように、デジタルスキルの高低は将来に大きな影響を与えます。スキルのある若者は新技術をどんどん取り入れ活用する一方、スキルが低い若者は取り残されていくという現実を改めて認識しました。

Uさんは、若者のデジタルディバイドに問題意識を持ち、メールでのアポイントメントからオンライン会議の設定、インタビューまで、非常にスムーズに進めてくれました。質問も的確で鋭く、感心させられました。「こんな中学生がいるとは、日本もまだまだ大丈夫だ」と思わずにはいられませんでした。このような気づきのきっかけを与えてくれた中学生のUさんに感謝です。