理事長コラム「ススメのひらき」~昔は良かった?
先日、小学生と話す機会がありました。「昔はインターネットが無かったんだよ」と伝えると、「えー、どうやって生活してたの?」と驚かれました。考えてみれば、今の小学生は生まれた時からインターネットが身近にあり、スマートフォンやタブレットを通じて常に接続された状態で生活しています。彼らにとってインターネットは、まるで空気のように当たり前の存在で、意識することすらないのかもしれません。
インターネットに関連したトラブルやSNSでの誹謗中傷、詐欺、犯罪といった問題も日常的に耳にします。「昔は良かった」と単純に懐かしむつもりはありませんが、小学生とのやり取りを通じて、改めてインターネットの普及が私たちの生活にどれほど大きな影響を与えたのかを考えさせられました。
今回のコラムでは、その変化について振り返りながら考察してみたいと思います。
情報との出会い方
昔は、情報を得るためには図書館に通ったり、新聞を読んだり、ラジオを聴いたり、テレビを観たりする必要がありました。たとえば、興味のあるテーマを調べるために、図書館の書棚をひとつひとつ眺め、ようやく見つけた一冊の本を手に取る瞬間の喜び。新聞では、日曜版の特集記事や連載小説を毎週楽しみにし、気に入った記事を切り抜いてスクラップブックを作ることもありました。また、家族で夕食後にラジオの前に集まり、みんなでラジオドラマの世界に浸る時間も懐かしいものです。
そして、テレビも大切な情報源でした。ニュース番組はもちろんのこと、ドキュメンタリーや歴史番組を家族みんなで見て、番組が終わった後に内容について語り合うこともよくありました。
新しい情報を得るのに時間がかかった分、得た情報は心に深く刻まれ、より豊かな経験になったのではないでしょうか。
人とのつながり方
手紙を書く時間、切手を貼る作業、そして届いた時の喜び。電話で話す声のトーンから相手の気持ちを察知したり、直接会って話すことで生まれる温かい人間関係。インターネットが普及する前は、人とのつながりはもっとゆっくりとしたものでした。SNSやメールで気軽に連絡が取れるようになった一方で、対面でのコミュニケーションの機会が減り、人間関係が希薄になっているという声も聞かれます。
変化する時代の中で
インターネットは、私たちの生活を便利で豊かなものにしました。オンラインショッピング、SNS、動画配信サービスなど、私たちの生活はインターネットなしでは考えられません。しかし、便利さの一方で、情報過多、プライバシーの侵害、誹謗中傷など、新たな問題も生まれています。私たちは、テクノロジーの進歩を享受しながらも、その一方で人間関係の大切さや心の豊かさを見失わないようにしなければなりません。
変わらない大切なもの、変わり続ける時代
インターネットがなかった時代にも、今の時代にも、それぞれに素晴らしい点があります。重要なのは、どちらが優れているかを単純に比べることではなく、それぞれの良さを認識し、自分にとって何が本当に大切なのかを考えることです。
テクノロジーは日々進化し続けています。私たちは、その急速な変化に対して恐れることなく、積極的に新しい技術を学び、日常生活に取り入れていく柔軟性を持つことが求められます。
しかし、技術がどれだけ進化しても、人間の根本的な価値は変わりません。デジタル化が進む中でも、私たちが忘れてはならないのは、他者を思いやる温かさや、共感の心です。効率や便利さが重視される現代社会においてこそ、私たちが築く人間同士の絆や、心のつながりが一層大切になっているのです。
これまでの経験を活かし、これからの時代に合わせた暮らしを、私たち自身の手で作っていきましょう。