理事長コラム「ススメのひらき」~どっちもあり

今年の初め、小さな神社にお参りに行った時のことです。大きな神社のような賑わいはなく、ひっそりと静かで、心が温かくなるような場所でした。お参りを終えた後、「神主さんがすぐに来られますよ」と近くの方に声をかけられ、しばらく待っていると、次々と地域の方々が集まってきました。新年の挨拶を交わしながら、近況を話す様子はとても和やかで、小さな神社が人々をつなぐ大切な場所だと感じました。

私たちの生活は、スマートフォンやデジタル技術の進化で大きく変わりました。手軽に情報を手に入れたり、オンラインで買い物ができたり、便利さは日常にあふれています。しかし、そんな便利な時代だからこそ、昔から続いている習慣や伝統について、ふと考えることはありませんか?今回は、「手段は変わっても、目的は変わらない」という視点で、慣習とデジタル技術の共存についてお話ししたいと思います。

変わらぬ想いをつなぐ ~慣習が息づく場所で~

老舗の和菓子屋さんを例にしてみましょう。そのお店では、職人さんが一つ一つ手作業で餡を練っています。機械を使えば効率的に作れるかもしれませんが、創業以来、変わらぬ製法で作り続けています。それは単に昔のやり方にこだわっているのではなく、「美味しい和菓子を届けたい」という気持ちが込められているからです。手間をかけて作られた和菓子には、特別な味わいがあります。効率だけではなく、人の想いが大切にされている場所には、今も昔ながらの慣習が息づいているのです。

デジタルで進化する ~効率化と新しい価値の創造~

もちろん、デジタル技術がもたらす便利さも見逃せません。たとえば、紙の書類がクラウドシステムに置き換わることで、事務作業が一気に効率化されます。また、オンライン会議で遠くの人とも気軽につながれるようになり、時間やコストも節約できます。さらに、デジタル技術を活用すれば、新たな価値を生み出すことも可能です。たとえば、伝統工芸品のオンライン販売や、博物館でのAR体験など、デジタル技術はさまざまな可能性を広げてくれます。

デジタル化の落とし穴 ~見過ごしてはいけないこと~

ただし、デジタルは万能ではありません。全てをデジタルにすればいいというわけではなく、たとえば、大事な商談の場では、直接顔を合わせて話すことで信頼が生まれることもあります。また、手書きの手紙や年賀状には、相手を思う気持ちが込められています。効率だけを求めると、こうした大切な感情やつながりを失ってしまうこともあります。「デジタル化すればすべてうまくいく」という考え方には、注意が必要です。

それぞれの良さを活かす ~慣習とデジタルの賢い使い方~

デジタル技術がもたらす便利さを取り入れつつ、昔からの慣習が持つ価値も見直していくことが大切です。「手段は変わっても、目的は変わらない」というように、それぞれの本質を理解し、状況に応じて最適な手段を選ぶことが大切です。デジタルを使うべき場面では積極的に活用し、人とのつながりや思いやりが必要な場面では、昔ながらの方法を大事にする。こうした賢い選択が、これからの時代に求められるのではないでしょうか。