理事長コラム「ススメのひらき」~手ざわり

2022年に「ChatGPT」が登場して以来、AIは一気に私たちの身近な存在になりました。私自身も、よく2つのAIサービスと自分の「三者」で対話をして、考えをまとめたり、深めたり、アイデアを創出したりしています。自分一人では思いつかないような発見もあり、まさに現代の「三人寄れば文殊の知恵」だなと、仕事でもプライベートでもすっかり頼りにしています。

スマートフォンのアプリ内にもAIの搭載が進んでいますね。皆さんが普段利用しているLINEやGoogleマップ、YouTubeなどでも、AIの機能を見かけることが増えたのではないでしょうか。

LINE AI Googleマップに質問して、AIが「書いていない情報」を教えてくれる|デジタルライフナビゲーター友次進 YouTubeにもAIがやって来た!|デジタルライフナビゲーター友次進

最近では「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」という新しい言葉もニュースなどで飛び交うようになっています。 「なんだか難しそう」「自分には関係ない」と感じる方も多いかもしれませんが、一見すると専門的なこのニュースは、実は私たちのこれからの暮らしや、安心・安全なデジタル生活に深く関わる出来事です。

今月のコラムでは、この最新AIの話題を切り口に、これからの暮らしとAIの関わり方について一緒に考えてみたいと思います。

■ そもそも「ミュトス」とはどんなAI?

一言で言えば、インターネットやシステムの「弱点を見つけるプロフェッショナル」です。

スマホのアプリや銀行のシステムなどには、見えないところに複雑なプログラムが動いており、そこに弱点(セキュリティ上の穴)があると悪意のある人に狙われてしまいます。ミュトスは、そうした穴をすばやく見つけて直すために役立つ最新のAIです。非常に強力なため、一般公開はされず、まずは社会の重要なシステムを守るために使われ始めています。

■ ミュトスがもたらす「光」と「影」

このAIの登場で一番大きく変わるのは「スピード」です。これが良い面と悪い面の両方を持っています。AIは「強力な盾」になる一方で、「鋭い矛」にもなり得るのです。

【光(良い面):守るスピードが上がる】
これまで専門家が時間をかけて探していたシステムの弱点を、AIがあっという間に見つけ出してくれます。危ないところを先回りして直せるため、私たちの安全がより強固に守られます。

【影(悪い面):攻撃のスピードも上がる】
もしこの強力なAIが悪意ある者の手に渡れば、サイバー攻撃の脅威が一段階上がります。

  • 社会インフラへの攻撃:銀行や電気、ガスといったシステムの穴をAIが瞬時に突き、大規模な障害を起こす。

  • 巧妙なウイルスの自動作成:従来の対策ソフトでは見つけにくい新しいウイルスを、AIが次々に作り出す。

  • 個人の端末からの情報流出:私たちのスマホやパソコンの弱点が狙われ、気付かないうちに大切な個人情報が盗み出される。

■ 結局、私たちはどうすればいいの?

私たちがミュトスを直接操作することはありません。システムの裏側の防衛はAIが担ってくれる時代になります。しかし、「表側(私たちの手元)」の防犯は、これまで以上に私たちが自分で気をつける必要があります。

AIの技術が進むと、「日本語が自然で、見た目も本物そっくり」な詐欺メッセージが増加します。文章が自然だからといって安心せず、以下の基本を徹底することが大切です。

  1. スマホやアプリをこまめに更新する(システムの穴を塞ぐ)

  2. 「急がせる」「お金の話」「個人情報の入力」は一度立ち止まる

  3. 迷ったら一人で判断せず、誰かに相談する

■ まとめ

Claude Mythosのニュースは、「これからスマホやネットを、どう安全に使うか」という私たちの暮らしに直結するお話です。AI時代の備えは特別なことではなく、日ごろの小さな確認の積み重ねから始まります。

AIの進化によってあらゆるものが合理化されていくことには、間違いなく私たちの生活を助けてくれるメリットがあります。しかし個人的には、何でも合理化される時代だからこそ、一見「無駄に思えること」や「時間のかかること」の中にこそ、人間らしい温かみや生活の楽しみが隠れているような気がしてなりません。

手書きで手紙を書いてみたり、誰かと直接会って他愛もない話で笑い合ったり、時間をかけて植物を育ててみたり。

便利な道具としてのAIをうまく生活に取り入れつつ、こうした日々の生活の手触りや「あえて手間ひまを楽しむ心のゆとり」は、私自身、これからも大切にしていきたいなと思っています。