理事長コラム「ススメのひらき」~ベストミックス

子どもがクレヨンで描いたような「未来のでんわ」のイラスト。左右にカメラ付きの箱型テレビ電話があり、左の子どもはカメラに向かってピースをし、右の子どもは笑顔で立っている。画面左上には「しょうわ55ねん6がつ12にち」と書かれている。
紙に手書きで描いた絵をAIで色を付けたり文字を足したりしました。

先日、とある出版社から取材を受けました。
東京の出版社さんでしたので、取材はZoomで行いました。

オンラインで人と話すたびに、ふと思い出すものがあります。
40年以上前のこと。子どものころに行った近所の科学館で見かけた「テレビ電話」です。

30メートルほど離れた場所に小型のテレビが置かれ、それぞれがケーブルでつながっていました。画面には相手の顔が映り、離れた場所にいる人と会話ができる仕組みです。

確かそこには、「みらいのでんわ」と書いてあったように記憶しています。
それが面白くて、何度も何度もテレビ電話をのぞき込み、相手と話して遊んでいました。

そして、現在。

子どものころに見た未来の電話は、インターネットという仕組みによって実現しました。今では、世界中どこにいても、画面越しに顔を見ながら、しかももって歩ける小さな機械(スマホ)で。便利な世の中になったものです。

約束の時間になり、パソコン画面の「参加」をクリックしました。

すると、取材先の皆さんの顔が画面に映し出されました。
事前にご連絡をくださった方と一対一でお話しするのかと思っていたのですが、画面の向こうにいらっしゃったのは、なんと5人。

一対五の取材です。
「おお、そちらはチームで来ましたか」と、思ったのはここだけの話です。

取材は30分ほどで無事に終了しました。
ただ、終わった後は、どっと疲れが出ました。
オンラインで取材や打合せを行った後、毎回のように感じるこの疲れ。
これは一体何なのだろう。


一つ目は、機材の問題

カメラで映し出される映像は、対面で見る表情ほど鮮明ではありません。音声も同じです。相手の表情をしっかり見よう、声の調子を聞き取ろうとして、知らず知らずのうちに目や耳に力が入っているのかもしれません。

二つ目は、「間(ま)」

こちらが話し始めると、相手の声と少し重なる。逆に、相手が話し出すタイミングとこちらの返事がかぶる。オンライン会議では、どうしても映像や音声にわずかな遅れがあります。以前に比べればずいぶん良くなりましたが、それでも会話のリズムが少しずれることがあります。声がかぶると、「あっ、どうぞ」「いえいえ、どうぞ」となり、会話が一瞬止まります。小さな引っかかりが、積み重なると意外と疲れます。

三つ目は、空気感

うまく言葉にするのは難しいのですが、同じ空間にいるときの雰囲気というものがありますよね。明るい、和やか、少し緊張している、前向きな感じがする。そうした場の空気は、対面では自然と感じ取ることができます。しかしオンラインでは、その空気感が分かりにくい。

この話しぶりでよいのかな。
今の反応はどう受け止められたのかな。
もう少し丁寧に説明した方がよいのかな。

そんなふうに、つい探りながら話してしまいます。

昭和生まれの悲しさか。対面の方が楽だなと感じることも多々あります。


デジタル技術やサービスには大きなメリットがあります。効率が高まり、利便性が増し、これまで難しかったことが簡単に、スピーディーにできるようになります。

ただ、すべての場面で「デジタル」が良いわけではありません。同じように、すべてを「アナログ」に戻せばよいわけでもありません。大切なのは、デジタルとアナログのどちらか一方を選ぶことではなく、それぞれの良さを知り、場面に応じて上手に組み合わせることだと思います。

便利なものは便利に使う。人と人との間にある空気感や、同じ場所で向き合うことで生まれる安心感も大切にする。

デジタルとアナログを上手に行き来しながら、日々の暮らしや仕事をもっと快適にしていけたらと思います。