理事長コラム「ススメのひらき」~消せない責任

病院の予約を取ったり、ネットショッピングをしたり、楽しい動画をみたり。生活の様々な場面でスマートフォンやインターネットが役立ちますよね。遠く離れた家族や友人とも、気軽にビデオ通話ができるようになり、便利な時代になりました。しかし、便利なデジタル社会ですが、私たちがまだ経験したことのない、新しいトラブルも増えています。

その一つが、今回のテーマである「デジタルタトゥー」。耳慣れない言葉かもしれませんが、誰にでも起こりうる問題です。

このコラムでは、デジタルタトゥーがどんなものなのか、そして、デジタルタトゥーから身を守るためには、どんなことに気をつければ良いのかを解説していきます。

デジタルタトゥーってなに?

デジタルタトゥーとは、インターネット上に残ってしまう情報のこと。一度公開した情報や写真は、完全に消去することが難しく、まるでタトゥーのように残り続ける可能性があります。

例えば、軽い気持ちでSNSに書いた近所トラブルの愚痴や、中傷するような内容を含むお店の口コミ…。当時は誰かに聞いてほしくて書いた言葉でも、後から見返すと恥ずかしい思いをするかもしれません。でも、一度インターネット上に公開された情報は、簡単に消すことはできません。

なぜなら、一度インターネット上に公開された情報は、サービス提供会社のサーバー(インターネット上の情報を保存し管理を行う場所)や、他のユーザーの端末など、様々な場所にコピーされてしまうからです。たとえ、自分の投稿を削除したとしても、コピーされた情報は残り続け、完全に消すことは非常に難しいのです。正確には、消えたことを確認する術がありません。

写真投稿とデジタルタトゥー

特に気をつけたいのは、写真や動画の投稿です。背景に自宅が写っていたり、位置情報がオンになっていたりすると、個人情報が世界中に流出してしまう危険性があります。

例えば、自宅の庭で育てている花の写真を撮ったとします。何気ない写真に見えますが、家の外観や表札が写っていれば、住所が特定されてしまうかもしれません。また、スマートフォンの設定によっては、写真に位置情報が付加され、どこで撮影された写真なのかが分かってしまうこともあります。

さらに、写真や動画の投稿には、「肖像権」の問題も忘れてはいけません。肖像権とは、簡単に言うと、自分の姿や写真を勝手に使われない権利のことです。例えば、旅行先で写真を撮影したとします。その写真に、知らない人が一緒に写っていた場合、勝手にSNSなどにアップロードしてしまうのは肖像権の侵害になる可能性があります。たとえ親しい友人や、可愛い孫の写真であっても、無断でインターネット上に公開するのは控えましょう。

デジタルタトゥーから身を守るには?

何気なく投稿した情報が、デジタルタトゥーとなって将来、自分や家族に思わぬ影響を与える可能性もゼロではありません。
写真や動画を投稿する際は、以下の点に注意しましょう。

  1. 個人情報:写真に自宅や車のナンバープレートが写っていないか、位置情報がオフになっているかを確認しましょう。
  2. 投稿の許可:写真に写っている人全員から許可を得てから投稿しましょう。許可なく他人の写真や動画を投稿するのはもちろんNGです。
  3. 内容:インターネット上に悪口を書くのはやめましょう。投稿前に内容を再確認します。

まとめ

インターネットは、私たちに多くの便利さと楽しさを提供してくれます。しかし、その一方で、使い方を間違えると、自分や周囲の人を傷つけてしまう可能性も秘めていることを忘れてはいけません。特に、「デジタルタトゥー」と「肖像権」の問題は、誰もが意識する必要があります。一度インターネット上に公開された情報は、完全に消去することが非常に難しいということを理解し、情報発信する際には、個人情報やプライバシーに十分配慮することが大切です。

新しい技術を楽しむと同時に、その使い方にも責任を持ち、安心できるデジタル社会を共に築いていきましょう。